個人開発者の LP のファーストビューが素通りされる 3 つの理由

LP を作って、ようやく公開した。SNS から人が流れてきて、アナリティクスの数字が動き始める。直帰率は思ったほど悪くない。それでもサインアップは伸びない ── 訪れた人がスクロールはしているのに、ヒーローセクションで何かを受け取らずに、ただ通り過ぎている感触がある。

「見られてはいる。なのに、その先で何も起きていない」── 個人開発者が自分の LP を眺めるとき、よく出くわす場所だと思います。原因は、配色でもアニメーションでも、ヒーロー画像のクオリティでもありません。LP のファーストビューが素通りされるとき、たいていほぼ同じ 3 つの理由が、毎回同じ順序で重なっています。

理由 1:ヒーローコピーが「機能名のリスト」になっている

最初の関門は、画面いっぱいに置かれた一行 ── ヒーローコピーです。訪問者は LP を開いた瞬間、0.5 秒で「自分のためのページかどうか」を判定しています。ここで素通りされたら、その下の機能説明も、Pricing も、フッターの「お問い合わせ」も、関係がなくなる。

それでも、個人開発者の LP のヒーローコピーは判で押したように似た形になります。

「リアルタイム共同編集・オフライン対応・無料のメモアプリ」 「最速 / 軽量 / 美しい、開発者向けのドキュメントツール」 「AI 搭載・チーム連携・データ可視化のオールインワン」

書いた本人にとっては、プロダクトの強みを過不足なく並べた、誠実な一行です。何ができるかを正確に表している。

ただし、訪問者の側から見ると、このコピーはすべて 「機能名の列挙」 になっています。「リアルタイム共同編集」「オフライン対応」「AI 搭載」── これらは、書き手の頭の中ではプロダクトの強みですが、訪問者の頭の中では まだ何の意味も持っていません。それが「自分の今日の困りごと」のどこに刺さるのか、訪問者は翻訳をしないと分からない。翻訳のコストは、訪問者ではなく書き手が払うべきものです。

人はファーストビューで、コピーを「自分宛か/自分宛じゃないか」で振り分けます。判定材料は、ほぼ「主語が自分の状況に重なるか」だけです。「リアルタイム共同編集の…」が主語のコピーは、その判定で他人宛の側に倒れます。スクロールはするけれど、何も受け取らずに通り過ぎる、という挙動になる。

ヒーローコピーで問うべきは「何ができるか」ではなく、**「訪問者が今日かかえている、どの不満が、このページで一歩前に進むのか」**です。「リアルタイム共同編集のメモアプリ」ではなく「会議中に同時に書き込んでも、誰の編集も消えない」── 主語を訪問者の状況に移すだけで、ヒーローコピーは「自分宛」の側に動きます。

ヒーローコピーは LP の前置きではありません。LP を読むかどうかを決める、LP そのものの最初の一文です。

理由 2:サブヘッドラインが「機能の翻訳」を訪問者に丸投げしている

ヒーローコピーを突破して、訪問者がスクロールに踏みとどまった。ここからがサブヘッドラインの仕事です。けれど、LP の 2 行目は、開いた瞬間にもう一度素通りされます。理由はサブヘッドラインの内容にあります。

典型的な書き方は、こうなります。

「リアルタイム同期で、複数人での編集も滑らか。オフラインでも動作し、サブスクなしで全機能が使えます。」

書き手の側からは、ヒーローコピーで言い切れなかった補足を、丁寧に追加した構成に見えます。機能を一段詳しく書き、価格の安心感も添えた。

ただ、訪問者の脳内では、別のことが起きています。「これは、私の何を解決するページなんだろう?」 という問いを抱えながら、サブヘッドラインを読んでいる。その問いに、サブヘッドラインが答えていないと、訪問者は「自分宛じゃないかもしれない」と判定を保留したまま、次のセクションに流れていきます。

機能の言い換えは、その問いに答えません。「リアルタイム同期で、複数人での編集も滑らか」と書かれていても、それが訪問者の今日の作業のどこに刺さるのかは、依然として翻訳されないと見えない。LP の 9 割は、サブヘッドラインで ヒーローコピーの機能を、別の語彙でもう一度繰り返している だけです。

サブヘッドラインでやるべきことは、機能の言い換えではなく、ヒーローコピーで立てた関心を、信用に橋渡しすることです。「会議中に同時に書き込んでも、誰の編集も消えない」というヒーローに対して、「これまで Slack に貼り付け直していたメモが、その場で 1 つに残ります」── これだけで、訪問者の頭の中の「自分の今日の作業」と、プロダクトの位置が、2 行目で初めて接続します。

関心 → 信用 → 行動、という順序があります。サブヘッドラインは、その 信用 だけを担当する場所です。機能の網羅は、信用が立った後に、その下のセクションでやるもので、入口に置くものではありません。

理由 3:ボタンが「無料で始める/詳しく見る/お問い合わせ」で散らかっている

3 つ目は、ファーストビューの締め ── CTA ボタンです。ここでも、ほぼ全員が同じ場所で転びます。

LP のヒーローセクションの締めは、よくこうなります。

「[ 無料で始める ] [ 詳しく見る ] [ お問い合わせ ]」

書き手としては、訪問者の温度感に応じた選択肢を渡している感覚があります。「試したい人は無料で、知りたい人は詳しく見て、相談したい人は問い合わせて」── 親切のつもりで、行動の選択肢を 3 つ並べる。

ですが、選択肢を渡された訪問者は、何も選びません

個人開発者には少し直感に反するところで、丁寧に作った LP ほどここで詰まります。人がファーストビューで行動するかどうかは、「選択肢の多さ」ではなく「次の一歩の明確さ」で決まります。次に押すボタンが 1 つなら押せる。3 つ並んでいると、「どれが正解か分からない」と感じて、結局どれも押さない ── あるいは、判断を保留してそのままスクロールで通り過ぎる。

LP のファーストビューには、行動を 1 つだけ 載せる。これがファーストビューの一番の規律です。「無料で始める」「詳しく見る」「お問い合わせ」が並んでいたら、メインは 1 つに絞る。残りはおまけとして、視覚的にも明確に小さくする ── あるいは思い切って、ヒーローの外に追い出してフッターやページ下部に置く。

そして、その「1 つの行動」も、抽象語にしない。「無料で始める」は、行動の指示ではなく、書き手の願望の表明です。訪問者は何をすればいいのか、依然として分からない。「メールアドレスを入れて、いま書き始める」と書けば、押すボタンと、押した後に起きることが、文面の中で確定します。

行動を 1 つに絞り、抽象を具体に置き換える。たったこれだけで、同じ訪問数の LP が、まったく違う数字を返してきます。

3 つの理由は、別々の問題ではない

ここまで、ヒーローコピー・サブヘッドライン・ボタンを別々に解いてきました。けれど、よく見ると 3 つは別々の問題ではなく、ひとつの順序の話を、別の場所で繰り返していることに気づきます。

その順序が、関心 → 信用 → 行動です。

ヒーローコピーは 関心 の入口です。訪問者の状況を主語にしないと、入口で素通りされる。サブヘッドラインは、関心を 信用 に橋渡しする場所です。「これは私の今日の作業の話だ」と訪問者の中で輪郭ができないと、橋が落ちる。ボタンは 行動 の蛇口です。蛇口を 3 つ並べたら、訪問者はどれもひねらない。

LP のファーストビューが素通りされるとき、たいていこの 3 箇所のうち少なくとも 2 箇所で、順序の同じ場所が抜け落ちています。だから、片方だけ直してもページは動かない。3 つを同じ順序で並び替えると、訪問数は変わらなくても、その先のサインアップ数字が初めて動き始めます。

まとめ:直すのは、デザインではなく順序

LP がうまくいかないとき、書き手はまず「ヒーロー画像を変えよう」「色味を整えよう」「アニメーションを足そう」と考えがちです。けれど、画像の質も、配色も、動きの滑らかさも、関心 → 信用 → 行動の順序が崩れた場所では、ほとんど効きません。

直すのは、デザインではなく、順序です。見えれば、直せる。次に LP のファーストビューを作るときは、デザインに入る前に一度手を止めて、3 つの場所を順に見直してみてください。

  • ヒーローコピーは、訪問者の状況が主語になっているか
  • サブヘッドラインは、関心を信用に橋渡ししているか
  • ボタンは、行動が 1 つに絞られ、具体になっているか

このチェックを通った時点で、LP は 9 割の同種ページから抜け出します。作る側の手数は、ほとんど増えません。

姉妹記事として、同じ「関心 → 信用 → 行動」の順序を別の戦場で扱った記事を書いています。メール戦場は 個人開発者のローンチメールが素通りされる 3 つの理由、Twitter 戦場は 個人開発者の Twitter 告知が素通りされる 3 つの理由、動画概要欄戦場は 個人開発の動画の概要欄が素通りされる 3 つの理由、GitHub README 戦場は 個人開発者の GitHub README が素通りされる 3 つの理由、Product Hunt 戦場は 個人開発者の Product Hunt ローンチが素通りされる 3 つの理由 にまとめています。サービスのトップページで素通りされる構造そのものは 個人開発者のサービスが「素通り」される、たったひとつの構造的な理由、作る側の誤算(プロダクトが語ると思っていた)は 「プロダクトは語る」と思っていた個人開発者が陥る 3 つの誤算、学ぶ側の入口は コピーライティングを学んでも売れない人の 3 つの誤解 にあります。並べて読むと、LP のファーストビューで起きていることは、戦場が違うだけで同じ構造であることが見えてきます。

ちなみに、配色やフォントやヒーロー画像は、この 3 つの理由とは独立した話です。どんなに整えても、ヒーローコピー・サブヘッドライン・ボタンの順序を直さない限り、ファーストビューの数字は動きません。逆に言えば、順序さえ整っていれば、ビジュアルは控えめでもかまわない。


LP の順序を直し、ローンチメールも直した。けれど、開かれてもなお登録に至らない ── そのとき直すのは、ヒーロー画像でもメールの熱量でもなく、1 行ごとの順序です。WHY → HOW を 1 冊にまとめたのが、下記の本です。個人開発者・インディー Web 作者・動画作者向けに、LP・短文・メールの戦場別の書き方と、Claude を実際に使ったプロンプト連鎖の実演を含めて統合しています。

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